グループ'84
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農場だより

生協の農場視察と生産者直売会で考えたこと。


 8月の夏の終わりの日曜日。普段は静かな山あいの農場、グループ'84福山の農場「ハーヴェストガーデン」はにぎやかな歓声に包まれました。お年寄りや障がいのある人にも気軽に参加できる小旅行を企画・実施している市民グループ、NPO法人旅とぴあ北海道のデイサービスで旭川の知的障がいをもつ皆さんとスタッフ、ボランティアのご一行様が収穫期を迎えた畑のじゃがいも堀り体験にやってきたのです。夏の終わりを惜しむようにこの日は朝から気温もあがり、芋ほりには少々暑すぎるくらいのすばらしい青空。いつもはインドアで時間を過ごすことが多いという皆さんも旭川から当麻町までの小一時間のドライブを楽しんで、福山の農場に着いたときには期待に胸を躍らせているようです。早速、長靴に履き替えて、軍手をはめて、芋ほりの準備を整えます。
 福山の自宅前から100mほど歩いて、じゃがいも畑に到着。作業の陣頭指揮はこの日、町内の運動会で不在にしている福山ではなく奥さんの景子さん。ボランティアさんにシャベルでじゃがいもを掘り起こしてもらい、土の中から顔を出したじゃがいもを障がい者の皆さんが一つずつ袋に拾い集めていきます。実際は、掘っているのはボランティアさんだから、芋ほりならぬ芋ひろいなのだけど、「ここにあるじゃがいもを残らず全部袋に詰めてねえ。」と声をかけると一つずつ真剣な表情で袋に詰めています。30分ほどでじゃがいもがたくさん詰まった袋の山ができました。

 北海道で生まれ育った人なら、子供のころ必ずといって良いほど芋ほりは体験しているはず。茎の枯れたじゃがいも畑を掘りおこすと白い肌のじゃがいもがごろごろ出てくるあの感動は地味ながらけっこうなものなんです。畑できゅうりやトマトを採るというのとはまた違うその感覚はやはり、これから収穫しようとするものが土の中に隠れていて見えない。本当にでてくるのか、自分で作った畑ならキチンとできているのか、堀りおこしてみないとわからないという、大げさに言うとある意味、金やダイヤモンドを掘るのと共通した感覚なのかも知れませんね。ただ、芋ほりはいろんな農作業の中でも比較的簡単に体験できる作業。是非、都会の皆さん、特に子供たちには体験してもらいたいものです。
 聞いた話で恐縮ですが、とあるリゾートの売店マネージャーを務める友人の話。お客様が北海道旅行のお土産にリゾートの売店からお知り合いの皆様に箱入りのじゃがいもを送られたそう。数日後、そのじゃがいもを受け取った方からクレームの電話。何事かと思って聞いてみると「じゃがいもに土がついてる!!」って怒ってるんだって。
 この話を聞いたとき、思わず笑ってしまったのですが、これってホントに笑えることなのかな?この人、芋ほりとかしたことないのかな?じゃがいもってどういう風にできると思ってるのでしょう。じゃがいもに土がついていることが不自然なことだと考えるその人の頭の中で、トマトはどんな風にできるんだろう?魚は海で泳いでいるのかな?焼肉屋で豪快に食べる骨付きカルビはもしかしてかルビーの工場で作られているのか?これが食料自給率40%の日本の現実なのか?これでいいのか日本人!!

 話がなんだかそれちゃいましたが、労働の汗をかいた後は楽しい昼食会です。今日のメインメニューは土の中から掘り出したばかりのじゃがいもがたっぷり入ったカレーライス!!あまりにも定番メニューかも知れませんが、この日のカレーライスにはたまねぎもにんじんもすべてハーヴェストガーデン、自家製の有機野菜たち。こんな新鮮素材のうまさを味わうには定番料理に勝るものはないのです。
 ボランティアさんが一生懸命つくるカレーを待つ間にも、ハーヴェストガーデンの車庫前にしつらえた臨時テーブルには、つぎつぎと新鮮な食材たちが並びます。飴のように甘いミニトマトや濃くそしてジューシーな小玉スイカ。枝からのもぎ取りをみんなで手伝ったゆでたての枝豆。そしてとうもろこしにきゅうりのお漬物。本とにこんなに食べきれるのでしょうか?カレーが出来上がり、それぞれお皿に取り分けて「いただきま〜す!」ボクも一緒にご相伴に与りましたが、うん、うまい。この仕事をやってって良かったぁ〜と思う瞬間です。障がい者の皆さんも、普段のデイサポートでは自宅から持ってくるお弁当ですら、食べさせるのに苦労するらしいのですが、この日はあっと言う間にカレーを完食。スイカや枝豆もどんどんなくなります。やっぱり、適度に体を動かしたあとのご飯はおいしいですね。
 食後の散歩はハーヴェストガーデンに程近い、野菜博士、故相馬暁先生のお宅にお邪魔しての森の小道散歩。相馬先生のご自宅では奥さんの佳子さんと長女の里緒さんが一行の到着を待っていてくださり、農場を案内してくれました。上の林の中には自由奔放、豪快にのびたつるにかぼちゃがごろごろ。ブルーべりーの実の甘酸っぱさにクチをすぼめ、下のハウスではもぎたてのトマトを味わいました。ハーブ畑の中にテーブルとベンチを出してゆっくり談笑した後、心地よい疲労感とともに旅とぴあの芋ほり体験隊一行は当麻を後にしたのでした。

 この日のハーヴェストガーデンのデイサポートは景子さんが、旅とぴあのボランティアとして農閑期にお手伝いを始めたことから、旅とぴあ代表の下間啓子さんと話が盛りあがり実現しました。私たち北海道に住んでいる人間であってもこうして農業の現場を訪ねる機会は年々少なくなってしまっているように思います。都市と農村、消費者と生産者、両者の乖離は、先の「じゃがいもに土がついている」ことに文句を言う人たちを生み出し、まさに我々人間が「命」をいただき生きているという現実を意識から遠ざけます。故相馬先生は北海道新聞に連載していたコラムの中で、こう書いています。
「私たちが生きていくことは、他者の命をいただくことだ。大豆や小豆はまけば芽が出るし、豚も鶏もたたけば悲鳴をあげる。ところが、スーパーでパックされた肉や野菜を見ていると、それらが生き物であることを忘れ、感謝の気持ちを失っていく。他者への思いやりをなくし、平気で人を傷つけがちになる。」
 農のある暮らし、農が身近な暮らし。今の社会に必要なのは「命」を感じるそんな暮らし方こそ、必要なのではないでしょうか?

文 北口浩之(ai-Link co.Ltd)
※文中の敬称は略させていただきました。

8月28日、当麻町のハーヴェストガーデンににぎやかな声が響きました。

景子さんの指示でボランティアさんが掘りおこします。

さあ、がんばって拾いますよ〜!!

普段、めったに経験しない芋ほりに夢中。

土の中から顔を出したまるまると育ったじゃがいも。

旅とぴあ北海道の代表、下間啓子さん。

袋いっぱいに詰まったじゃがいもの山

枝豆を枝からはずしていきます。

簡易テーブルに並んだご馳走。メニューはシンプルでも素材は贅沢極まりない有機栽培の新鮮野菜たち。

うまいっす!おかわりっす!

故相馬先生の上の畑に通じる森の小道を散策。

下のハウスではミニトマトが鈴なり。これもおいしくいただきました。

ひろーいハーブ畑でしばしの休憩。楽しい1日となりました。